日本分類学会連合さんが主催する公開シンポジウムが国立科学博物館で行われました。写真は肖像権やプライバシーに配慮したつもりですが、なんとか雰囲気は分かるのではないかと思います。参加者は想像より多くて、予備席を作って対処していました。
さて、シンポジウムの内容ですが、「分類学におけるDNA情報の活用」というシンプルなタイトルから容易に想像できるのではないでしょうか。分野が少しずつ違う最前線の研究者4名が各45分の報告を行ったのですが、「うわぁ、もっと聞きたい」といった感触のまま、時間はあっという間に過ぎてしまいました。
なにしろ背景となる技術が実用段階に至って15年程度。今も日進月歩ですから、期待もある反面、誤解も多いことは容易に想像できます。趣旨説明に立たれた東京大学の伊藤氏は「以前は形態か分子かという不毛な議論がなされた」とした上で、「両者はともに重要、分子情報も何ら特別な存在ではなく、如何に活用していくかが問題」としています。
眼を皿のようにして、耳をすまして慎重に聞いていたつもりです。会場全体と同じポイントで笑っていましたので、概ね適切に理解していたのではないかと思います(笑)。
発表にはDNAバーコード等、共通の話題もあったのですが、どうにも「隠蔽種(cryptic species)」というキィワードが気になってしまいました。同種と思われていた樹木に着生するシダのrbcLという遺伝子を調べたところ、大きな塩基配列の多型が見い出され、その上、子孫を作らない生殖的隔離も確認されたという内容でした。常識的には新種として記載すべき別種ですよね。
「すみれは徒に細かく分けられている」という意見には、とても納得できる側面があります。でも「分類群を集約する方向性に沿って、変種ABCの内、Bを採用しなかった」という類の話についてはどうでしょうか。方向性とは誰かの意思ですよね。本来、現実をありのままに分析した結果であれば増えても減っても仕方がない、自然科学って、そういうものだと思うのです。
幾つも面白い話があったのですが、近々、エポックメーキングな報告があるとのこと。DNA情報活用の結果、これまで形態的に別種とされていた3種が実は同じDNAの持ち主だったというオチが付いたようです。蟻の例で説明すると分かり易いと思いますが、働きアリと女王アリ、翅のある雄アリは形態が異なろうが同種だというケースに似ています。
大ウケしていたのは「自分が研究を続けている間に、携帯DNAバーコードリーダーが実用化されるだろう」と語った研究者です。瞬間最高視聴率ではありませんが、会場の反応が最高潮に達したのは言うまでもありません。
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